
慶應義塾は、安政5年の創立以来その形を次第に整え、明治31年、今日に至る一貫教育の制度を確立しました。その際、満6歳から22歳までの一貫教育の特色を、福澤諭吉は「その卒業生は学問に於て敢て他の学生に譲らざるのみか、十六年の苦学中には一種の気風を感受すべし。即ち慶應義塾風にして、(略)之(これ)を解剖すれば則(すなわ)ち独立自由にして而(しか)も実際的精神より成る」と示しています。それから一世紀余を経て、社会は国際化・グローバル化への対応が強く求められる一方で、将来の社会を担う子供達を取り巻く環境は、家庭や地域の機能の低下が指摘されるなど、種々の課題を呈しています。慶應義塾は、このような時代にあって自らの使命に鑑み、福澤諭吉の独立自尊の精神を体現した将来の社会の先導者を育てるために、小学校から大学に至る一貫教育の新たな源流として慶應義塾横浜初等部を開設することに致しました。
慶應義塾横浜初等部では、入学間もない時期には、健康な身体と共に「律儀正直親切」な性質を養うことに特に留意します。そして、6年間を通じて、知力、体力、気力、表現力、人の心を思いやる力、異なる価値観を超えて協力する力、社会的責任感と倫理感など、多様な資質を育みます。そのために日々の教育においては、基礎学力の重視はもとより、次の三つの柱を大切にします。すなわち、抽象的な理屈をそのまま受容するのではなく、観察・体験のなかで能動的に掴みとることを通じて自然・地域社会・国際社会等への理解と洞察を深める「体験教育」、自己の目標や限界に挑戦し困難を克服する力を養う「自己挑戦教育」、更なる情報化・国際化の中で、英語教育のみならず日本語においても、良書に親しむことと、自分の考えを他人が理解できるように言葉で表現する訓練を通じて、あらゆる思考の基盤となる読む力と書く力を養う「言葉の力の教育」です。勿論、この年代における家庭の役割の大きさは言うまでもなく、家庭への働きかけも大切にします。
6年間の課程を経て卒業時に、その基礎が培われていることを期待する資質を建学の精神に照らせば、「身体健康精神活発」と「敢為活発堅忍不屈の精神」の二語に集約できます。強健な身体、気力と快活さに富んだ精神、そして、弛まず積極的に事をなす姿勢、自ら思慮判断する智力に裏付けられた勇気があってはじめて、将来の益々複雑で変化の激しい時代において、直面する様々な困難に粘り強く取り組むことができるのです。
慶應義塾横浜初等部の卒業後は、慶應義塾湘南藤沢中等部・高等部に進学します。大学まで見据えた新たな小中高一貫教育の実現を目指して、両校の間では、基礎学力の重視、教育内容上の連続性に留意しながら、カリキュラムの充実に向けて必要な協力を行います。また、個々の生徒についても、進学という節目は大切にしながらも、両校の教員が協力を深め、12年間を通じて見守ることができる環境を創って行きます。


