小中高一貫教育

 慶應義塾は、1858(安政5)年の創立以来その形を次第に整え、1898(明治31)年、今日に至る一貫教育の制度を確立しました。その後、社会は変化を更に加速させ、国際化・グローバル化への対応が強く求められています。一方で、子供達を取り巻く環境は、家庭や地域の機能の低下が指摘されるように、様々な課題を呈して来ています。
 横浜初等部では、独立自尊の精神を体現した将来の社会の先導者を育てるために、今の子供達を取り巻く環境と、子供達が社会に出て活躍する時代を共に見据えながら、新たな教育を行っています。
 入学間もない時期には、健康な身体と共に「律儀正直親切」な性質を養うことに力を注ぎます。律儀とは、自分のなすべきことを考え、それを行うことです。自分のなすべきことは、年齢と共に公の役割にまで広がっていきますが、その習性は、幼少期に、自分の身近な生活の中で行うことから始まります。そして、小中高の一貫教育において、知性、感性、体力、気力、表現力、人の心を思いやる力、異なる価値観を超えて協力する力、社会的責任感と倫理感を持った未来の先導者を育てていきます。
 そのために日々の教育は基礎学力の重視はもとより、「体験教育」、「自己挑戦教育」、「言葉の力の教育」を三つの柱に展開しています。
 初等部生に期待する資質は、福澤先生の「身体健康精神活発」と「敢為活発堅忍不屈の精神」の二語に集約できます。強健な身体、気力と快活さに富んだ精神、そして、積極的に活動する姿勢、何事があっても屈しない心があって初めて、将来の益々複雑で変化の激しい時代において、直面する様々な困難に粘り強く取り組むことができると考えるからです。

福澤諭吉書「身体健康精神活溌」

福澤先生は最晩年に記した「福翁百話」の「身体の発育こそ大切なれ」において「先ず獣身を成して後に人心を養え」と記しています。人間の発達段階に応じたバランスのとれた心身の発育は先生が常に重視したことで、以来、慶應義塾の教育の大切な姿勢になっています。

『修身要領』第6条(福澤先生による浄書)

福澤先生の最晩年に、先生の平素の言行を基に、高弟達が『修身要領』を編纂しました。慶應義塾の教育の基本にある「独立自尊」の主義を29カ条にまとめたもので、その第6条に「敢為活発堅忍不屈の精神を以てするに非ざれば、独立自尊の主義を実にするを得ず。人は進取確守の勇気を欠く可らず」とあります。また第7条には「独立自尊の人は、一身の身体方向を他に依頼せずして、自から思慮判断するの智力を具えざる可らず」と記されています。


横浜初等部では、
「体験教育」「自己挑戦教育」「言葉の力の教育」の三つの柱を軸に、
全教科、全教員が連携協力して日々の活動を展開しています。



体験教育


 授業時間内と課外の活動、校内と校外の活動のいずれにおいても、具体的な観察・体験を大切にします。抽象的な概念や理屈も、そのまま受け入れるのではなく、自ら能動的に観察し体験することで初めて実感を以て理解できるようになりますし、その繰り返しの中で、物事の本質を掴む洞察力も培われます。
 昨今の子供達は、生活や遊びの体験が乏しくなっています。それだけに、非日常的な体験だけでなく、日常の生活と結びつく体験や創造的な遊びを豊かにすることが益々大切になっています。



自己挑戦教育


 自分の得意なことで更に高い目標を定めて達成したり、逆に苦手なことに積極的に取り組み、少しずつでもできるようになる体験を大切にします。例えば、運動から知的な活動へというように、その子供にとって得意で愉しい活動で得た自信をそれ以外の活動に広げていくことが大切です。その積み重ねが、どんなに難しいことでも、自分にはやり遂げることができるという自負と強い気力を生み出します。
 先導者となるためには、困難に直面しても、くじけることなく粘り強く取り組み解決する力が求められているのです。



言葉の力の教育


 良書に親しむことや、自分の考えを他人が理解できるように言葉で表現する訓練等を通じて、あらゆる思考の基盤となる読む力と書く力、更に他者との協働を可能にする聞く力と話す力を養います。
 あらゆる教科にわたって確かな学力の基礎、論理的な思考力の基礎として、言葉の力が益々大切になっています。また、言葉の力を、現象を読み解く力、問題を見出し解決する力につなげるために、文字としての言葉だけでなく、数や量を扱うことにも力を入れ、いわば科学の言葉、科学の文法の基礎も養います。

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